学長通信『則天去私』 President's Blog

No.1 風の色 2022年9月

“秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の色にぞ驚かれぬる”

三十六歌仙の一人 藤原敏行の古今和歌集収録の元歌を少し変えてみました。どこを変えたかおわかりでしょうか。そうです。「風の音」を「風の色」に詠み変えてみました。松田聖子の歌に「風は秋色」がありますが、色や色彩に敏感な感性を持ち続けてきた日本人にとって「風」には色を感じるもので、古来「木枯らし」にも「春風」にも「そよ風」にも色を感じとってきました。

また、色は匂うものであり、いろは歌の最初のフレーズは「色は匂へど」で始まるように、「季節と色と匂い」に感覚を研ぎ澄ましてきたわけです。

立秋を過ぎ、9月を迎えるこの季節は、去り行く夏への哀惜と、来るべき豊穣の秋への期待が交錯する、一年の中でも最も移ろいを感じる季節であり、一番好きなシーズンです。ライフシフト大学でも8月の最終土曜日に第6期の卒業生を送り、9月の第三土曜日に第7期の新入生を迎える大切な節目の時期でもあります。学長としては、Graduationではなく、欧米の大学の様に、Commencement(新たな人生のスタート!)という気持ちで、卒業を祝い、新入生に対しては、それぞれのLifeに新たな風をわたらせ、新たな色や匂いを加えていってほしいという気持ちで、胸を膨らませています。

この写真は、この夏久しぶりに訪れた日光の華厳の滝で撮ったものです。水しぶきが大自然のミストと化して、いっとき暑さを忘れさせてくれました。今から120年前に一高生の藤村操が、「萬有の眞相は唯だ不可解」と残し滝壺に身を投じましたが、華厳の滝の「華厳」は、仏教の華厳経/華厳宗からの由来であり、その教えは「時間も空間も超越した仏の力と、その境地に向けた、ひとの実践の永遠の持続」を賛美するものです。ミストを全身に浴びながら、「人生」や「命」を感じ、改めて「学び」続け、未知と向き合う醍醐味を実感しました。


(著者:藤田 英樹)