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第9期オープンセミナー④「アンラーニングとライフシフトへのいざない」レポート

昨今「リカレント教育」や「リスキリング」というキーワードが注目されています。しかしこれらのキーワードはいずれも目の前の仕事に結びつけることを目的としたものです。ライフシフト大学の学びは、仕事だけでなく人生を考え、自身の成長や新しいステージを見出すことを目的としています。そこで必要になるのが「アンラーニング」という考えです。

今回は『アンラーニングとライフシフトへのいざない』をテーマに開催されたオープンセミナー(2023年6月26日開催)より、ミドル・シニア世代が今後の人生をより良くするために必要なアンラーニングについて、ライフシフト大学学長の藤田英樹が解説します。

社会人の学びに対する意識が低い日本の現状

ライフシフト大学は人生100年時代、80歳現役時代を生き抜くための学び直しを提供する場です。昨今リカレント教育やリスキリングという言葉がもてはやされ、政策としても動いています。我々はそれを先取りし、リスキリングで人生100年時代に備えることを考えています。学び直しにおいて大事なのは表面上のスキルを醸成することではなく、自分自身が気づいていない強みや特徴を引き出すことです。ライフシフト大学では優秀な講師陣や、異業種・異業界の仲間、あるいは年代を超えた仲間とともに戦略的な学び直し、未来につながる学び直しを提供しています。

ここで学びの現状について振り返ってみましょう。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2018」によると、1年間に自分の意思で勉強した社会人の割合は33%という結果が出ています。つまり7割の人は学ぶ習慣・経験を持っていなかったということです。また2015年のOECD諸国において、大学を中心とする学校や研修の場に改めて入り直す25歳以上の社会人の割合を見ると日本は下から2番目です。OECD平均が16.6%であるのに対して、日本は2.5%しかありません。日本の社会人の学び直しはOECD諸国において低水準であると言えます。

さらにパーソル総合研究所がアジア諸国・オセアニアを対象に行った勤務先以外での学習や自己啓発活動の調査結果を見ると、日本は「特に何も行っていない」が46.3%で一番高い。次いでセミナー参加や資格所得のための勉強が13%台となっています。

「何も行っていない」の回答に注目すると、韓国は12.3%、中国は6.3%であり、近隣諸国は非常に自己啓発活動に取り組んでいることが分かります。これに比べると日本は目の前のこと、あるいは現状の仕事や今の環境に埋没して安住してしまっているのではないでしょうか。

これまでの学びを脱し、新たに学び直す「アンラーニング」

このような状況に対して国はリカレント教育・リスキリング教育を重視しようとしているわけですが、それよりも前に「今の状態で良い」「今まで学んできたことで十分」という凝り固まった先入観から脱する「アンラーン」が必要です。アンラーンとは「学ばない」ことではなく「学びほぐす」ということです。今の学びを脱して、新しい学びに着手することを意味します。アンラーンをすることで現状からのブレイクスルーが発生します。ただしブレイクするーも数年経つと固定化してしまうので、またアンラーンをする。このサイクルを繰り返すことが重要です。

この考えは目新しいものではなく、日本に昔からあるものです。武道でも「守破離」という言葉があります。「守」は先人の教えやルールを学んで自分のものにすること。それも一定のところまで来ると限界を迎えるので。そこで第三者の教えや本で学んで「破」る。さらにそこから一歩引いて全体を見回し、自分独自のものの見方や考え方、生き方を作るのが「離」です。この「離」も数年経つと古くなって「守」となるので、またサイクルを回していく。このサイクルが「道」であると私は解釈しています。ライフシフト大学ではこのサイクルを定着させるための習慣づくり、習慣づけをサポートします。

学びにおいて私が大切にしている「五つの輪」があります。中心にあるのが「己」、これは自分自身を見つめて覚醒し、変化することが目的です。その変化を達成するのに必要なのが「師」「書」「人」「旅」の4つになります。

「師」は先生やメンター、尊敬する人物。「書」は読書や学校、セミナー。「人」は仲間や人脈、異業種交流、さまざまな社会体験。「旅」は旅行、越境体験、副業や兼業の経験。これらを経験することが学びの本質であり、学びを活性化していくと思います。

また時間軸と存念軸の関係も学びにおいては重要です。存念とはマインド、自分の考え、方向性などを指します。特にミドル・シニア世代は残された人生の時間の中で、この存念を具体的に考えていくことが必要です。5年後・10年後はどうするか。自分の5年前・10年前はどうだったか時間軸に沿って考えます。企業人であれば会社や仕事の比重が大きくなりますが、自分の死を考えて社会の中で自分はどのような意義・考えを持って活動すればよいか、貢献できる価値は何かを考えるべきです。

例えば今活躍している大谷翔平選手は高校一年生のときにマンダラチャートと呼ばれるフレームワークを使い、自分の目標を書き出しています。そして努力を続けながら目標を13年かけて実現しています。ライフシフト大学でも自らの将来の思いをいかに実現させるかを図式化・言語化する講義を行います。

人から感謝される価値を生み、社会を豊かにするのがライフシフトの目的

さて、改めてライフシフトとは何でしょうか。人生100年時代の今、VUCAと言われる不安定な時代を長く過ごしていかなければなりません。例えば今50歳だとしたら、健康寿命は30年、寿命まで50年です。ここで自分の人生を考えてみることが大切です。10歳から50歳までの40年間を振り返り、どう過ごしてきたか、何をしてきたか、長かったか、短かったか。あるいは残りの30年間をどうやって挑戦していくか、自分で新たな活動を見出していくか。こういったことを考えます。

ライフシフトの目的は転職することではありません。人や社会から感謝される価値を生み出し続け、社会を豊かにすることが目的です。そしてそれをミドル・シニア・ベテランが恐れずにやっていくために必要なのが「終身知創」、学び続ける環境下に自分を置くことです。ライフシフト大学はまさにこの場を提供しています。

ライフシフトの本質は生きることへの本質を問うことです。人間誰しも組織から離れ、個人で生きていく局面に向き合います。そのときのことを今から考えることが重要です。そして自ら変わっていくこと、あるいは変わろうとすること自体が人生の目的であり、自分の存在への問いかけとなります。ライフシフト大学はキャリアの自律や追求、シフトだけを学ぶだけの場ではありません。自らのライフに向き合い、ライフを豊かにする学びの場であることに重きを置いています。LIFEの文字に沿って「Leraning」「Innovatorship」「Future」「Encounter」の4つをライフシフト大学では用意しています。「Leraning」は学び直しを経験し、内からの自信を身につけて自分を磨き上げること。「Innovatorship」は知と情と意の再武装、自らを変革し、組織を変え、現実を変えていくマインドを獲得する。「Future」は自分の未来に向けたアップデートの習慣化、視座を高めポジティブな選択肢を考える。「Encounter」は未知の自分や他部門の仲間、師やメンターなど今後の人生につながる幾層もの新たな出会いとネットワークをそれぞれ指しています。

ライフシフトの根底にあるのが「Innovatorship」です。これはイノベーションとリーダーシップをかけ合わせたライフシフト大学の造語です。Innovatorshipでは「未来構想力」「実践知」「突破力」「パイ(Π)型ベース」「場づくり力」といったキーワードについて時間をかけて学びます。定年後は再就職・独立起業・社会貢献・勉強の継続といった選択肢があります。いずれにしてもInnovatorshipや自分の未来を作ることを根底に置きながら考えることがライフシフトにおいては必要です。

最後に江戸時代の儒学者・佐藤一斎の言葉をお送りします。「少にして学べば壮にして為すこと有り 壮にして学べば老いて衰えず 老いて学べば死して朽ちず」。

以上、ライフシフト大学では何を考えているか、どんな学びをしていただくかの一端を紹介しました。皆さんにとって何らかの示唆やきっかけになれば嬉しく思います。

ライフシフト大学第9期 募集要項および申込ページはこちらです。ぜひご検討ください。

 


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